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闡鐓魔界・ヴァルセムス

闡鐓魔界・ヴァルセムス

13章 試練

今オルクス達がいる場所はオゼットの宿屋だ
ルネに乗り、1日をかけて、メルトキオからオゼットまで走ってもらったのだ

その間にアセリスはオルクスに家出したこと伝えた

「何?!家出だと!?」
「気合い入ってるでしょ」
「気合いの問題か!跡取りが家出したら捜索が来るだろうが!」
「まあ、お父様のほうから来るわねー…爺からは一応公認だけど」
「…何があった」
「なんにも。どちらかというと私情かな。」
「私情?なんだそれ」
「・・・この世界、何かおかしいの。上の地位の人なら知ってるのかもしれないけど、教えてくれそうにないから…」
「貴族以上の地位ってなんだよ…」
「私はあくまでも娘、だから教えられないの!」
「んで、それを調査するために、そんな荷物を持って家出と」

目線の先には大きめの鞄が背負われている

「まあ、いろいろ持ってきから…それに…」
「?なんだ」
「教えませんよー」
「下ろすぞ」
「下ろしたらいろいろ困るんじゃないの?」


そしてアセリスは乗り疲れたのか部屋で睡眠中だ

オルクスはリステイルケアで骨のヒビや擦過傷を直すが、闘技場での囚人との戦闘でかなり体力、精神を消耗していた
しかし今はルネがいる
そのため、今後は大概の事に遅れは取らないだろう

幸いまだオゼットにまでオルクスが脱走したことは届いていないらしい
しかし犯罪者である以上フードで顔を隠さなければならない

「(出来れば速めにアジトにいき、回復に専念をしたいがメルはアジトがわからない)」

そのため、宿の外で座っていた

「アジトの場所もそろそろ変えないとな……このままだといずれ包囲される。遠くに行った方がいいか…」

これまでの話を整理すると
まず、本来の目的はマキトを殺す事
一ヶ月前、オゼットでマキトと再び会い、殺しにかかるも、マキトの仲間に阻まれ殺せず
そしてマキトを追い、フウジ山岳付近で、魔力の衝突を感じ、急いで見れば今度はラシュクの魔力を感じる
そして視認をすれば、マキトが死にそうになっていた所を助ける(俺が殺すため)
ラシュクの本は、謎の敵の手に渡っていた
戦闘が終わりアジトに戻る

本はアジトの地下に封印をしていたも関わらず、封印は砕かれいた
加えて、これまで開発した禁呪や魔術を纏めた書物までもが盗まれていた

そこでアセリスと出会って、条件付きで王宮の書物庫に忍び込む
しかし謎のアサシンに捕まって、牢屋で過ごし、モンスターと闘い、処刑二日前にメルに会った

メルは闘技場からの脱出の代わりに、モンスターの脱走に協力を要請
脱走中に囚人と闘うが苦戦、引き分けのような形になる
逃走の途中、アセリスと出会い結果としては作戦は成功した

そして今にいたる…

「はっ…S級犯罪者が群れて、引っ張り回され、一部には力が及ばずかよ」
「誰が及ばずなの?」
「!……居たなら声をかけろ、メル」
「今来たんだもの、彼に乗って」

その方向を見ると、木々の上にはドレイクが居た
「モンスターに乗って来たのか?」
「えぇ、そのほうが速いし」
「そちらはどなたで?」
「………いつから居た、アセリス」
「今上を見上げていた時ですよ」
「知り合い?」
「…場所を変える、ついて来い」

※※※※※※※※※

アセリスとメルは、すぐにうち解け合い、オルクスの後ろで喋りながらついてくる
オルクスとどういう経路で出会い、目的などだ
当本人にとって五月蠅くて仕方がなかった

「へー…貴族なのに学生なんだ」
「家出中だけどね」
「というと、その荷物は研究や旅に必要なもの?」
「はい、旅は慣れてませんから」
「おいお前等、喋ってないで黙って此所に立て」
「?」
「…?どうしたの」
「アジトに移動する」
「どうやって?」
「教えるつもりはない。さっさとこい」
「あ、待って……来て、セクト」

メルは後ろに向かって喋ると茂みから赤いカマキリのようなモンスター、デットリーインセクトがくる

「え…?モンスター??」
「ずっとついて来てたのはこいつか。闘技場でいっていた理由はこれか」
「さっき闘技場で働いたって話してたでしょ、その間に仲間と言えるモンスターと仲良くなってね」
『キィキギ』
「うん。大丈夫だから来て」
「へ?」
「詳しいことはあとで話すから。それにこの子大人しいのよ?」
「でも…」
『…キキィシュー(…怯えているな)』
「それは仲良くないから。今から仲良くしましょう?アセリスもほら」

セクトは少しずつ近付き、頭を垂れる
アセリスは恐る恐る頭を触り、撫でる

「よろしくお願いします…ね?」
「うんうん。それで…オルクス君、どうするの?」
「―転移コード 黄昏の狭間 冥府の異郷―」

メルに聞かれるが、オルクスは詠唱に入っていた
その様子を黙って見守る三人(?)

「―開くは魔天の扉 ネアリス―」
「きゃ!」
「何!?」

地面は発光し、視界が奪われるむ

※※※※※※※※※

「…転移完了」
「え…?」

アセリスが目を開けるとそこには、以前ガオラキアの森を走っていたときに見つけた小屋―オルクスのアジトだった

「今のは一体なんなの?」
「…ただの転移魔法陣だ。
(昔からオゼットに行くのに何日もかけてられないからな。相互移動でオゼットにしか繋がっていないが…)」
「そんな事まで出来るんだ…」
「此所は…どこ?」
「メルさんは初めてですよね。ここはオルクス君の家ですよ」
「ここが…へー…なんだかさっきの森とは随分違う感じね」
「数日は此所で過ごす。アジトにある書物、機具には手を出すな。
 食料は近辺の森、倉庫にある。…川は家の後ろだ。あとは好きにしろ」

それだけを言うとオルクスは森に消えていった…

「好きにって…どうしろと…」
「ま、まあ…とりあえず家に入りましょう?」

※※※※※※※※※

「んー…やっぱ隠れるならこの森だが…このまんまじゃ遭難しちまいそうだ」

ツンツンとした、灰色の髪にバンダナをつけた青年はぼやく

「まあ…あいつなら多分なんとかしてくれるだろうし…とりあえずオゼットにでもいくか」

※※※※※※※※※※

「ふっ」

オルクスは2~5cmほど石が宙に投げる
それはひとつではなく10個近くある
石は3mほど上がると重力により落下を開始する
ひとつの石がオルクスの眼前に迫る
途端、石は砕ける

オルクスはマントを脱ぎ、法衣の姿だった
動きは疾く、目にも止まらぬ速さで、布でテーピングを施した拳で石を砕いていく

最後のひとつは頭の上に落ちてくる
しかし、既に髪に触れるか触れないかの位置に来ると突如霧散する
砕き終えるとオルクスは落ちた石のかけらを見る

「チッ…八割ってところか。まだ回復していないか…」

場所は森を離れた砂漠方面で、近くには崖があり下は海だ
この辺り一帯はオルクスの訓練場になっている

「…最近乱戦続きだったからな…身体が追いついてないのかも知れないな・・・
 ─我に付きまといし忠実なる無言の僕 今その黒き体を現し我を守れ─
 シャドウサーバント!」

拳を地面に打ち付ける
この魔法は影の出現量に問わず、一定の魔力を消費する

普段からこのように魔力を消費した状態でオルクスは影で訓練などを行っている
既に数は200に達している

「体術、下位・下級・中級魔法のみだ。さあ来い!」

※※※※※※※※※

「オルクス君はどこにいったのかしら?」
「さあ…あまり私達と居たくないのかもね」
「どうして?」
「多少なりと接触してるからとか…このアジトの場所をバラしたりしないかとか」
「そっか…今まで一人だったものね。疑いたくもなるわね」
「それにしても…ほとんど目茶苦茶ね。この家は」

アセリスとメルはオルクスの家の掃除をしていた
所々に蜘蛛の巣。ほこりが溜まり、汚くなっているからだ
本や機具などは掃除の邪魔にならない程度に端などに寄せている

「にしても変なところね。これらで一体何を作ってたのやら…本なんて薄いのはまるでないし」
「そのほうが長く楽しめますよ?…そういえばこの家は一人で建てたのですかね?」
「たしかに…というよりも、これらを一体どう入手してるのかな…」
「不思議ですね」
「そう?」
「はい、なんだか謎ばかりです」
「人を殺してるのだから、その内は明かさないものじゃない?」
「まあ…そうかもしれませんが…不思議なのは確かですよ」
「そうかしらね…私、外で昼食の準備をしてるから」

メルは外に出て行くと、アセリスの顔は空しそうだった

「私も…なぁ」

その日オルクスはアジトに帰って来なかった

※※※※※※※※※

オルクスと別れ二日

アジトはそれなりに整頓されたため、ほとんどが暇な時間になり、アセリスは自分が持って来た荷物からいろいろ実験などをしたり、メルはセクトと一緒に森を周って居る

オルクスは二日にわたる訓練を終え、家に戻るとそこには…

「なんだ…この匂いは…」
「あ!戻って来ちゃったか…ごめんね、ちょっと場所借りてる」
「…何してる?」
「この辺のマナとか、生態状況についてちょっと…ね。オルクス君はどうしたの?」
「いや…いろいろ話があったのを思い出してな。メルは?」
「セクトさんと一緒に森の視察に…」
「まあいい。俺は奥の部屋にいる、用があればノックしろ」
「あ…うん。このことは叱らないの?」
「好きにしろと言ったはずだ」

それだけをいうとオルクスは部屋に閉じこもった…

※※※※※※※

「なにかしら此所…」

そのころメルとセクトは森の深部付近に来ていた

メルの目の前には崖が上に広がっており、とても登れるようなところではなかった
しかしメルが気にしたのは目の前にある、浅い洞窟

洞窟自体さほど奥行きはない
しかし入口には壁になるように魔法陣が張ってあり、ただならぬ雰囲気を出していた

『メル、戻りましょう。此所は何か危険だわ』

メルの隣りに日の光とは違う光が漂う

「そうね…オルクスに聞いてみようかな…答えなさそうだけど…」

ガサガササッ

「…!」

『―光は集結し汝を包む壁となさん―』

メルの隣に居た―光の精霊ロトスは姿を現す

その姿は、左目に布を巻き、雄々しいような女性らしき雰囲気をだす

ロトスは詠唱しきると、メルとセクトの前に上から下へ薄い光の壁が出来る…

それと同時に茂みからの物音がやみ、何かが出て来る

「…(人?)」


姿を現したのはメルと同じくらいの年の青年だった
青年にはメルは見えていない
壁は一種の光の屈折を応用したものでこちらの姿は見えていない

バンダナで立たせた髪は灰色
服装はマントで見えないが多数の物を隠しているように見える

「む…足跡が続いてると思えば…なんだこれ」

青年は気になるようにメルが見つけた魔法陣を見る

「なんかの封印か…?にしても手付かずだったらしいな」
「…(何者かしら…こんな森に。まさか…オルクス君を探しに来た賞金稼ぎ?)」
「ふむ…こりゃ俺には分かんねぇな。まあ…さっさと従兄弟殿やらを探さねぇとなー」
「(いとこ?この人親戚でも探しに来たのかな)」
「さてと……そろそろ出てこいよ。気配でバレてる…ぜ!」

青年はメルの存在に気がついていた
マントの懐から小石が投げられる
それはメルの顔を掠れた
「…っ!?」
「へぇ…まだ姿を隠すか。ならこっちから出してやるぜ!」

さらに青年の腕に、爪のような物が装着される

接近戦だ

『させない!』

ロトスが前に出る
片鎌が付いた、キザルメらしき槍を持つ左手を前に翳し、光を発する
それは閃光となり、青年の動きは止まる

「な、なんだ!?」


青年は閃光に目を覆う
するとセクトは動き、鎌のような前足を青年に降りつける

しかし青年は気づく
爪を前足に接触させ、弾きながら青年は距離を開く

「おいおい…一体何の冗談だ?女にモンスターに…精霊だぁ?」
「あなたは何者なの!?一体何のためにこの森へ…」
「んー…しいていうと、人捜し。話し合いをちょいとね」
「話し合い…?人がいないこんな森の奥深くまで?」
「いやね、とある情報と推測で隠れたりするなら此所かなーと思ってね」
「隠れる…?」
「と…ちょいと喋りすぎたかな。ともかくまあ…引くわ。女性相手にするなんて趣味じゃないんで」
「え…ちょ、待っ…?」
「いで!」

青年は逃げようとして、何かにぶつかる
顔を上げれば…

「どこにいくつもり…だ!」
「あぁ!って―――ぐえ!」

青年は突如現れた…オルクスにより投げられる
そして木にぶつかり、尻餅をつく

「メルさん大丈夫ですか?」
「あ、アセリス?どうしてここに?」
「なんだか、オルクス君が魔力を探ったとか…」
「あ…そっか」


―凍てつき―

さらに逃れられないように、オルクスは氷系の呪文で青年の手足を封じる

「つ、冷てえ!何!?つか話を聞いて!従兄弟さん!」
「だれが従兄弟だ!あいつとの仲なんざ、繋がっていない!」
「わわわ!落ち着いて!その氷の爪を下ろして!俺死んじゃう!」
「あいつの仲間なんざ…死にやがれ!」
「あぁ!御立腹!?ちょま、待って!そこの方、助けて!マジ死んじゃう!!」
「えーと…話しを聞きたいから…落ち着きましょう?」


※※※※※※※


「…こいつは元は俺の従兄弟だった奴の仲間だ。名前はスリースとか言ってたな」
「なるほど」
「少し前にオゼットで戦闘をして、森の中に俺を蹴り飛ばした」
「…(だって殺されそうだったし…つか君、道具盗んだじゃん)」
「…とりあえずいきなり殺すとか飛び過ぎ。」
「殺る。が…その前に話しくらいは聞いてやろう。どうしてお前が此所にいる?
 …フウジ大陸の方ではいなかったな」
「大陸…?ぁー…サイバックに行ったあと、そっちに行ったのかな?
 …あんたとオゼットで闘った後な、あいつとサイバックを目指してガオラキアの 森を抜けるまで一緒だったんだよ。
 んで出口が近くなって、俺はサイバック近くにある村に向かったんだ。」
「村…たしかにあったが何の為だ?」
「私用だよ。…家族の事でね、行方不明なんだ。
 あそこの村は故郷なんだ…まあ大 した情報も仕入れられなかったから、
 三日前にサイバックに向かったら…あんたの事が掲示判の記事になっててね。」
「まあ…なってたわね。」
「チッ…で?それで俺を探しにきた理由は?」
「いやね?ぶっちゃけ君の仲間にしてくれないかなー?」


※※※※※※※※※※


その後スリースはぐるぐるに木の蔓で巻かれ、身動きが取れなくなった

「あのー…仲間に…」
「断る。ともかくこれはなんだ?」
「オルクスも知らない物なの?」
「…結界か…」
「内部はあまり奥まで無さそうですね」
「何かの保存用のとこかな…」
「あのー……仲間に…」
「…よし。結界を壊す。離れてろ」
「出来るの?」
「このくらいの奴なら外からは脆い作りになっているはずだ」


アセリスとメルは10mほど離れ、オルクスはそのことを確認すると一気に魔術を発動させる

「フリーズランサー!」
六つの氷の槍はダーツの様に刺さり、結界を破壊する

ガラスの様に砕ける結界

「…何?」
「居る…!なんだ、こいつは…?」

黒い靄・霧、そういったもので包まれた‘個体’が出て来た
霧は濃く、中の形状も分からない…

そして、10秒もしないうちに、霧は晴れ始め…

「何っ!」

視線すら追い付けない速さで、あっという間に中にいた‘何か’が逃走する

「あで!」

その速さの為か、脱走した何かはスリースの顔にぶつかり、方向を変えてまた逃走した

「速すぎる…追いつけないな」

オルクスは断念し、視線を洞窟に戻し中に入る

「あの速さで移動するのはモンスターではないですね…まるで作られたみたいです」
「と言っても人口で作られたにしては制度がいいな。良過ぎると言ってもいい」

洞窟自体は縦横3m、奥行き5mほどの小さい物だった

「長くいたようだが…微かにしか魔力が残っていないな」
「追跡は可能なの?」
「無理だ、さっきの奴の魔力がもう消えかけている…
(一時的にマナを活性化させたのか?それも長く準備していたようだが…)」
「おや…これは何でしょうか?精石みたいですが…」

アセリスが洞窟の一番奥で、拳ほどの大きさの黒と白の…精石らしき石を見つける

一般的に精石とは、その地帯のマナの質・濃さに応じて結晶化する
例えば雷なら球体
闇なら涙滴型を逆さにしたような形などに変わる

特に大きな精石ほど、ほとんど見つからず、主に精霊がいる所でたまに見つかるくらいだ

「…謎の物体が居た洞窟に精石…か。でもおかしいね」
「光と闇の精石に近いが、この近辺のマナは薄い…まして精霊ならこんな場所にす ら住み着かない」
「先ほどの封印が関係してるのですかねー。まあ持ち帰って調べますか。面白そうですし」
「…ついでに、さっきの奴とぶつかったこいつも実験にいいだろうな」
「…へ?」


※※※※※※※※

―アジト―

長い白衣を着たアセリスは、持ち帰った精石らしき石をオルクスと調査している

「ふむ…」
「どうだ?」
「いろいろ分かりました。まず、この石は精石に非常に似てます。
 普通、光と闇の関係ですから反発や対になってるのは分かるよね。
 だけどこの石は反発がないの。むしろ混じり合うくらい。」
「混じり合う?」
「絵の具のように混ざるの。かけらで混ぜたら比率は黒は6、白は4ってところ」
「…で、どうなった」
「それが…はっきりいうと、別の属性が生まれた…みたいです」
「別の属性?」
「とりあえず…この二つを合わせると、闇属性に片寄った感じのが出来たの
 でも検査して見ると光属性と闇属性、両方に似てて…でも似てるだけみたい」
「…この合成したかけら、借りるぞ」
「…もう私の器具じゃこれ以上は分からないし、いいですよ」

かけらを手に取ると、その色は灰色に近かった
しかし、色は近いだけで全くの別物だった

※※※※※※※※

アジト出れば、メルは昼食の準備と、縛っているスリースの見張りをしていた

オルクスの手には灰色のかけら
どの属性にも当てはまらない物

マナを手に集めたり、漂わせたりする
しかし、変化はない
ぐっ、と手を握る
するとかけらは砕け、マナとなる
それを摂取する…しかし

「変わりは無しか…
(とりあえず…アジトの場所をどうするかだな…その前に…)」

「で?お前は何の用なんだ?」
「だから是非とも仲間に…」
「お前はあいつの仲間だろう」
「…事情が変わったんだよ」
「何故?」
「…ぶっちゃけもう疲れたし…(ボソボソ」
「なんだか…かなりパシられっぱなしとか苛ついたとか…言ってるけど…本心は別にありそうですねー」

メルがオルクスの隣に来て、今まで話された事を言う

「…強くなりたい」
「ん?」
「強くなりたいから此所に来たんだ。これが…本心だよ」
「何の為に?」
「今は言えないな……代わりと言ってはアレだけど、仲間にしてくれるなら此所数年のマキトの事なら教えるからさー」
「…」

するとオルクスは無言でアジトの方に戻っていく

「無理か…はぁ~」
「どうしてオルクス君なの?」
「んー…魔法とか体術とかを使ってる人で、俺が知ってる限りオルクスの旦那が一番強いんだよねー」
「ふーん…でさ、マキトって…誰なの?」
「オルクスの旦那の従兄弟だよ、旦那はマキトの事を殺そうとしてるらしいけど…
なんだか二年前にも接触があったらしいさー」
「へー…殺そうとしてる理由は?」
「その辺は分からないねー。ところで…あんたら二人はどうして旦那と一緒なんだ?」
「そこは、ひ・み・つ。」
「かなり気になんだけど…と、戻って来た?」

再びアジトからオルクス、そしてアセリスが来る
しかし今度はオルクスの手には黒いベルトらしき物を持っていた

「このベルトを付けるかどうかで考慮してやろう」
「ん…?それ…ナンデスカ?」
「付けるか、否か」
「付けます!是非!」

メルはスリースに巻いたロープを解く
そしてスリースは、腰につけるか少し迷いながらも、腕にベルトを巻いた
それは右小手を守る様に付けられ、動きに支障が無いか確認をする

「付けたな?来い」

オルクスは森を向かって歩き、スリースはそのままついていった

※※※※※※※※

そこはオルクスの訓練場だった
しかしスリースの様子がおかしい

「苦しいか、それはそうだな」
「これ…何?」
「それを付けたまま、頭のバンダナを三日間、俺からどんな方法でも守って見せろ
 取られた瞬間、仲間になることを諦めろ。そのベルトは返してな」
「………ハイ?」

何がなんだか分からず、スリースは混乱する
その隙をオルクスは逃さない
スリースに顔にアイアンクローが迫る

「取るじゃなくて殺る!?」

体をブリッジさせて回避し、そしてサマーソルトを行う
が、蹴り上げを行っている足を受け止める様に両手で掴まれ、技として成立しない

「遅い…!」

そしてオルクスは一瞬のうちに手を持ち替えると、その場でスリースをスイングし投げる

「うわっ!」

―刻まれし紅き痕を残すは 凍てつきし爪―

受け身を取り、オルクスはそのまま転がるスリースに追撃をする

スリースも立ち上がり、手持ちの斬る事を重視した獣爪のようなものを装着して応戦する
が、差は歴然だった
まず、リーチで負ける、次にアイス・クロウの効果により徐々にスリースの爪が氷り始める

「(マキトはこんな奴とやり合ってたのかよ!)」

爪を付けて無い手で懐から投げナイフを取りだし、数本投げ付ける
しかし、らしくもなく、投げるその手からナイフは滑る様に離れ、安定しなくなる
オルクスはそのナイフをアイス・クロウで弾く
しかしその間にスリースは距離を開き…既に逃走をしていた

「せいぜい足掻くといい…それを物に出来るかで勝負になる」

※※※※※※※※※

「はぁ、はぁ・・・んだよ…これ…」

スリースは木の根に腰を落とし右小手に付けた黒のベルトを見る

「なんか…仕掛けてねぇかこれ?」

※※※※※※※※※

アジトでメルは、アセリスにスリースに付けたベルトのことを聞く

「あのベルトは精神の吸収…魔力ではなく精神自体を吸収してる感じなの」
「どういうこと?」
「精神は主に魔力やマナを操るの。マナ自体全てを司るけど…精神の安定は魔力の安定
 安定がないとマナを操りにくくなるのつまり、体内にあるマナがただ漏れて…」
「えーと…つまり精神が安定してないと生命の危機になるって事?」
「まあ、そういうことですね」
「そんなのが何であるの?」
「ベルト自体は普通に売られてるものです」
「え?」
「実は…先ほどの洞窟から持ち帰った精石らしき物を…全部合成したのです。
そうしたら…灰色より黒に近い石が出来て…」


――――――


「これは?」
「…何か合成結果とかでデータが取れるかと思いまして…」
「で、全部合成してこうなったと。フラスコに入れたままだが…データは取ったのか?」

オルクスの視線にはフラスコに水が入っており、その中に灰色より黒い精石が沈んでいる

「先ほど…取ろうとして、出したら…精石を置いた台が黒く変色しはじめて…
 なんというか、浸食ですかね、精石も少し減りました」

すると、三脚が付いた鉄製の台をアセリスは床からだす
その台の一部分は銀の色から黒に変わっていた
そしてオルクスはそれに触りはじめ、途端に離す

「…!吸収されてる?…まさか…
 この精石は今まであの洞窟にあったマナを吸収して肥大化したのか?」
「らしい…ですね。どうします…?これ」
「いつまでも置いて置く訳にはいかないからな………これにその石を漬けろ」

オルクスは戸棚から茶色に近い革製のベルトを取り出す

「ちょうどいい…あのスリースとかいう奴に装着させて、実験してやろう」
「え…?まさか殺すつもりなの?」
「それは……あいつ次第だ」

オルクスはベルトを精石があるフラスコに投下する
すると、ベルトは精石に当たると徐々に、茶色から漆黒の色に変えていった…それと引換えに精石も小さくなっていく

「恐らく、物には浸食、命には吸収と言ったところだろうな。」

※※※※※※※※※

「1日だ…待ってやる。」

オルクスは訓練場から動かず、腕を組み森を見る
「実際にはほぼ二日。実験結果を出すにしても仲間にするにも見極めるにはいいだろうな」

―異形の猛虎、牙は鋼、爪はルキン(超金属)
 銀のものなり 天地トワズのその走り 我が前ににて見せたまえ―

オルクスの横に銀の虎 ルネが現れる

「…あいつが逃げないように見張っていろ。逃げようとするなら襲ってでも連れ戻せ」
『承知しました』

ルネはオルクス見ることなくスリースが逃げた方向に行き、やがて森の中に消えた・・・









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